【理転】システム創成学専攻 合格体験記(東大院工学系研究科)

大学院受験

文系学部生が、東京大学大学院工学系研究科システム創成学専攻に合格したので、その時の記録を載せておきます。なお、筆者は合格後入学辞退をしたため、主に入試結果発表までの流れについて書きます。

出願時提出書類

    1. TOEFL iBT…76点(R20, L21, S19, W16)
    2. 成績証明書…GPA 3.68くらい。3年後期までの成績
    3. 志望指導教員の申告表…後述。
    4. 希望研究室独自の研究希望調査票…後述。
    5. 研究計画書

推薦状は不要です。希望する研究室によっては研究室独自の提出書類がありますので、研究室のブログを要確認です。また、出願前後で第一志望の研究室の先生にメールなどで挨拶or研究室訪問が必要になる場合がほとんどだと思います。そこら辺も研究室ブログなどをみてよく確認しておいてください。

志望指導教員の申告表

で、理転の場合に大事なのが、この申告です。なるべく多くの希望の教員を並べておいた方が、受かる確率は上がります。また、どの教員を書くべきかわからないor自分の興味のある分野を扱っている教員が少なすぎる場合は、次の手順に従って欄を埋めてください。

まず、自分の研究したい分野が、システム創成学専攻の4つの研究重点分野のうち、どの分野に最も当てはまるかを確認します。4つの分野は、⼈⼯物ネットワーク、グローバル循環システム、社会経済システム、先端知デザインであり、同じ分野に所属している研究室であれば、第一志望の研究室でなくとも自分の研究したい分野を指導してもらえる可能性が高まります。なぜなら、教授の専門と指導できる範囲は同じではなく、指導できる範囲は教員の専門より若干広めだからです。しかし、研究重点分野を越えて希望外の研究室に配属された場合、自分の専門を丸々変えることになることも覚悟しなくてはなりません。ホームページの教員紹介のページにアクセスすれば、どの教員がどの分野に所属しているかがわかります。

そして、自分の希望がどの研究重点分野に当てはまるかを確認したのち、その分野に所属している先生方を、自分の希望順に並べ替えて申告表の欄をすべて埋めます。また、説明会などの情報収集に参加した挙句、自分の第一希望の研究室が超絶人気だと分かった場合、第二希望の先生を第一希望の欄に入れることを検討します。第一希望の研究室の競争が激しい場合、それに落ちると、枠が空いている他の研究室が自分の希望の下位の研究室だけ、ということになりかねません。専門課題の過去問などを見て、自信がなければ安牌を選びましょう。

研究室見学

私の第一志望の研究室は、出願後に研究室見学がありました。先生から詳しく話を聞くことができたり、研究室の先輩方に話を聞ける貴重な機会ですので、ぜひ有効活用しましょう。申し込み方法・時期などは各研究室のブログなどを参照してください。

専門課題

2024年は、8月1日夕方から8月15日24時まで、専門課題を解く時間が与えられました。第一志望の研究室の先生の課題を解くことになっているので、気を付けてください。題材は基本的には先生の専門に関する最近の英語の論文です。

論文は基本的に翻訳をかけて読んでしまって構いません。ただし、中には論文の中に出てきた英単語の意味を聞かれて困った人もいるようなので、原文でも目を通しておくことをお勧めします。

理転の場合、本当に厄介なのは、これまで基本のキも触れたことがないような話題がベースになっている場合です。その場合、次の手順で解き進めます。

    1. GeminiやChat GPT, Chat PDFに論文の内容と質問を読み込ませ、解答させる。いくつかのサービスでの回答内容を比較したり、聞き方を変えたりして、何度も出てくるような中核的なキーワード・概念を取り出す
    2. 中核的な概念・キーワードを知るために、それに関する新書など、薄くて読みやすい導入的な文献を読む。場合によっては、ネット上に論文の形で概念の紹介をしている文献もある。複数の文献で基礎知識を得る。
    3. 基礎知識を得たところで、論文に登場する発展的な概念を理解するため、概念の元となった論文を読んだり、それを解説しているサイトなどを探していく。数式の場合は一つ一つ、その意味をかみ砕いて説明できるまで丹念に調べていく。
    4. 研究の経緯などに関しては、学会が出している○○大百科など辞典系が役立つ可能性がある。自分の大学の図書館が役立つ。

口述試験

8月26日, 27日の二日間で行われました。口述試験(基本的な面接内容)10分、専門科目の口頭試問20分で、計30分です。zoomで行われ、自分に割り振られた時間枠の15分前にアクセスします。ちなみに面接までの15分は案内係の部屋で待機です。

口頭試問中はキーボード・マウスの操作、zoom以外のアプリの起動、画面共有機能の使用は不可です。バーチャル背景については自分が設定していなかったため何も言われませんでしたが、おそらく不可かと。zoomの名前表示を受験番号・名前にするよう指示が入りました。面接開始5分前に面接用URLが案内係から共有され、そこから面接部屋に飛んで時間になったら入室許可が下ります。

面接部屋の先生は5人くらい。司会担当と第一志望の先生と、その他先生方です。発言者以外はカメラオフになっていました。

聞かれたことは以下のような感じです。淡々としていますが、自信がないと結構圧迫感を感じます…

    • 基本事項(司会の先生)
      • 志望理由
      • 併願の場合、第一志望か
      • 第一志望の研究室落ちても入るのか
      • 第一志望の研究室の先生の専門はどこで知ったのか
      • 研究室で自分の知識や経験がどう生かせるか
      • 卒業後の進路は?
    • 研究計画書について10分(第一志望の先生)
      • 内容についてザックリ説明して
      • 将来的に(大局的に)何が目的?この研究がどう役立つ?
      • この研究で○○(データのリソース、サービス)を使うとなっているけどなぜこれ?
    • 専門課題について(第一志望の先生+α ほかの先生からも)
      • この論文のこの分析手法を使うメリットは?
      • それを計算式から詳しく説明すると?
      • 似た分析手法との違いは?
      • このジャンルの分析をするのに使えそうな分析方法で、他に知っているものはある?
      • この分析方法のデメリットは?
      • それを補う方法は?

結果発表

9月5日に結果発表でした。面接から長いですね…。16:00発表でそれより5分くらい遅れて指定のURLに掲示がありました。合格は分かったのですが、どこの研究室に所属かは別の書類ので掲示とのこと。それは16:20くらいかな?に掲示されました。

私は志望指導教員の申告表の書き方をミスった(志望の研究分野の先生を全部並べなかった)ため、全く見当はずれな研究室に配属となり、やむなく辞退しました。辞退届についての連絡は、数日後大学院の方から全員にメールでお知らせが来ました。辞退届を出す前に配属予定の研究室の先生に連絡とって相談するのもアリです。私はそうしました。辞退届提出後、配属予定の研究室の先生にその情報が共有されることはないようなので、個別に辞退の旨先生に送るとよいかと思います(辞退前に先生に連絡を取っていた場合)。

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コメント

  1. ryuchell より:

    はじめまして,貴重な合格体験記を公開してくださりありがとうございます!
    今年,私もシステム創成学専攻を志望している者です.

    ひとつお聞きしたいことがあり,コメントさせていただきました.
    出願時に研究計画書や志望動機書などを提出されたかと思うのですが,その書類選考(第一段階)の時点で,どれくらいの人が落ちていた印象でしょうか?
    差し支えなければ,当時の体感や聞いた話でも構いませんので,教えていただけるととても助かります!

    お忙しいところ恐縮ですが,もしお時間あればご返信いただけると嬉しいです.

    • 釘根 より:

      コメントありがとうございます。

      当時の一次試験合格発表の資料と、今公表されている2025年度入試の志願者数から換算するに、一次試験の段階で27%ほど落とされているようでした。

      1年ほど前の話なので、当時の体感はだいぶ忘れていますが、TOEFLも悪くはなく、研究計画も自分の大学の教授に見てもらいつつ作成し、成績も悪くない、といった感じだったので、提出書類の不安はありませんでした。

      一方、専門課題はうんうん唸りつつなんとか仕上げた感じだったので、専門課題〆切の1週間後にある一次試験合格発表はそれなりに緊張していた気がします。

      システム創成学専攻は教員が多いマンモス専攻的な所があるので、合格点に達しているのなら選り好みせず合格させたい、という側面があるような(個人の主観です)。

  2. impati. より:

    初めまして。貴重な合格体験記ありがとうございます!今年システム創生に志望しており、とても勉強になりました。

    お聞きしたいことがあり、コメントさせていただきました。1つは口述試験で学部での研究内容を聞かれたかお聞きしたいです。あと、口述試験が2日で行われたというのは、1日目に口述試験で2日目に口頭試問ということでしょうか。

    お忙しいところ恐縮ですが、お時間あれば回答いただきたいです。よろしくお願いいたします。

    • 釘根 より:

      コメントありがとうございます。

      ①口述試験で学部の研究内容を聞かれたか?
      特には聞かれなかったです。口述試験は、志望理由など基本的なこと→研究計画書の内容について→専門科目試験の自分の解答について+αツッコミ という順で聞かれました。研究計画書の内容や、専門科目試験の解答が学部での研究内容と関連しているのであればそれに絡めて回答することもあるでしょうが、研究内容をメインで聞かれることはありませんでした。私と私の志望教員・その他面接官の方々の場合ですので、人が違えば聞かれることもある…かも?一応聞かれたらこたえられるようにしておけばよいかと思います。

      ②口述試験・口頭試問は2日間に分かれるか?
      分かれません。二日間のうち、自分に割り当てられた30分間の枠ですべての面接内容がまとめて行われます。

      …という感じになります。健闘を祈ります。

      • imparti. より:

        お返事ありがとうございます。

        私は外部生なので実際に試験を受けた方のお話とても貴重です。お時間割いていただきありがとうございました。

        二次試験に向けて頑張ります。

  3. 小川 より:

    システム創生学志望の文系大学2年生です。
    現在教養数学の学習が終わり、統計学、データサイエンス、英語の勉強を中心にしています。
    志望の論文を読んでみると、情報理論や機械学習の基礎が含まれていて、どれほど深く踏み込んで勉強をすべきかに非常に迷っています。よって、
    1志望研究室に関わる勉強を学部時代どれくらい、どのようなことをやっていたか?
    2理系分野の勉強をどのような手法で行なっていたか?
    を質問させていただきたいです。
    お忙しいところ恐縮ですが、何卒よろしくお願いします。

    • 釘根 より:

      お、2年生で志望が決まっているのは有利ですね。質問内容に関しては、今年の院試シーズン終了後、志望研究室に直接連絡を取ってみるのがベストです。見学希望、どんな内容に興味があって、今から何を準備すればいいか、とかをメールで聞けば何かしら返ってくるかもしれません。あとは、来年の説明会と研究室訪問に参加してしまうのも良いかと。

      以上を踏まえた上で、私なりの体験と見解を以下にまとめます。実際、志望指導教員と話してみたら違うことを言うかもしれませんのであしからず。
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      1. 志望教員がやっている研究の中の、とある1テーマを研究したくてその研究室を志望しました。研究手法は理系ですので、文系では学べません。研究対象は学部時代の専攻と一緒でしたので、学部では文系の手法で同対象を研究することに専念してました。

      2.大学基礎数学(微積、線形代数、確率統計)の更に基礎部分を独学で学びました。統計は、文系でも研究手法として使え、指導してもらえるので、それで学部の卒業研究を行なっていました。機械学習など、大学院の研究計画に自分で取り入れた手法は、その研究方法が自分で実行できることをアピールできるor突っ込まれても対応できるように、研究計画書の研究手法に書いたことを中心に独学でプログラミングしてました。研究計画に関係しないことは勉強してません。情報理論は大学院受験の時に専門論述課題が出てから1週間で学びましたが、これはもうちょっと早くやっておいてもよかったかな、という感じ。

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      シス創の先生方は文系出身の人が完璧に理系の分析手法や考え方を理解していることを期待していません。むしろ、同じ研究対象を文系的観点から研究した経験などが研究室に新しい風を吹き込むことを期待していると思われます。

      以上から、文系学部生が理系で学ぶべき内容は、専門論述の課題論文で出てくるジャンルの基礎事項・院に提出する研究計画書に書くつもりの内容です。前者は入門書の内容を身につける、後者はプログラミングでも分析手法でも概念でも学部生のうちに体得する感じです。

      あとは自分の興味の対象を熱意を持って研究することが一番の対策になります。また、希望の研究対象or研究方法がが決まっているなら、それを研究できる他の大学院を探すことです。一点集中で院を目指すとあてが外れた時に私のように苦労する羽目になりますので、可能な限り複数の併願を見つけて同時期に一気に済ませるのが良いかと。

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      以下、具体的な教材や勉強法
      ▼数学…石村園子, 2023「改訂新版 すぐわかる線形代数」
      マセマが有名だが、私にはフォントのごちゃごちゃ感が合わなかったため。同シリーズで微積・確率統計もあったはず
      ▼プログラミング…
      ・初心者向け、楽しく学べる系の本。
      →例)youwht, 2021「コピペで簡単実行! キテレツおもしろ自然言語処理」
      ・PythonならGoogle Colabの開発環境
      ・初心者向け本のあとは、自分でやりたい分析手法を調べて実行を繰り返す
      ・Geminiはプログラミングコードのエラーが出たとき、修正案を教えてくれて楽
      ▼情報理論…
      ・初っ端から難しい本を手に取ってしまったのでおすすめは無し。

  4. ぴかぴ より:

    初めまして!貴重な体験談をありがとうございます。
    来年度に受験しようと思っているのですが、課題や面接、英語の配点や合格点はご存知でしょうか。
    可能な範囲で教えていただけると幸いです!

    • 釘根 より:

      配点と合格点は残念ながら分かりません…ただ、一次試験合格者のみに二次試験があるので、まずは一次試験を突破できるよう対策していく必要があると思います。

      頑張ってください。

  5. u.toyo.sys より:

    突然のご連絡となり、失礼申し上げます。
    もし希望いたしました指導教員に配属されなかった場合、発表直後に変更をお願いすることは可能でしょうか

    • 釘根 より:

      まずは落ち着いてください。記事で薄々結果は察していらっしゃるでしょうが、公式に問い合わせてください。
      自分の気持ちを整理するためにも、やるべきことは全てやった方が良いです。

  6. Nnnn より:

    シス創進学を検討している航空宇宙工学科3年の者です。
    貴重な情報を公開していただきありがとうございます。
    もしよろしければいくつか質問に答えて頂ければ幸いです。

    1. GPAは最低どの程度は必要か。(3年前期終了時で2.9、残り半年頑張って3.2程度なのですが厳しいでしょうか。一応TOEFLは100弱は出せています。)
    2. 人気の研究室の情報の入手経路
     やはりシス創の内部の方から得たのでしょうか
     もし学科外からも見れる情報源があれば教えていただきたいです。

    3. 専門課題にどの程度時間を割いたか
     シス創以外も複数受験予定なので、勉強時間が削がれたり、かといってシス創一点突破の他の受験生に質で劣ったりと少し心配です。

    お忙しいとは思いますが、よろしくお願いします。

    • 釘根 より:

      返信遅くなりました。

      1.これは明確な基準は分かりませんが、一般的には3.0以上が望ましいとされていますね。成績以外で強みを出せるのであればそこまで気にしなくてもいい気がします

      2.これは、シス創全体の研究室紹介(パネル展示)みたいな日に、希望の研究室の先生に直接聞きました。「〇〇研究室は人気ですか?」と。同じようなことを、個別の研究室訪問の時にその研究室にいる大学院生にも聞きました。その反応で大体分かると思います。

      3.日々の勉強からなるべく大学院でやりたい研究関連のことを勉強していましたし、シス創の専門科目対策は意識して時間をとる、という感じではなかったので、何時間かよく分かりません…参考にならずすみません。でも、研究計画書は大学3年の秋ごろから数カ月かけて書きました。自分の大学の何人かの先生にも見てもらいました。研究計画書は希望の研究室の専門課題の内容に関連するものだったので、それが専門課題の対策になった気はします。

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